今日の一言 5月30日 感じる心のために
- 公開日
- 2024/05/30
- 更新日
- 2024/05/30
校長雑感 一隅を照らす
「この仕事は何をつくろうと常に普通の同じ仕事の繰り返しである。この仕事はただ謙虚にただ奉仕的にただ献身的になされなければならない。顔面も手足も胴体も少しも勝手な選択は許されない・・・・
自分の手の中で造られているかさえ忘れて芸術家はまるで一寸一寸真っ暗な穴のなかを進む虫けら同様唯つくるのである・・・
そしてものの形はそっと人からかくされた品物のようにいわば封のまま、彫刻家の指を通って清らかに、そっと大事に作品の中にすべっていかなければならない。」
・・・
「ロダンは、何かをつくろうとしているのではなく、そこにあるそのもの、ありのまま、自分が見えているものだけを必然的に創造する」・・と。
引用:「ロダン」リルケ著
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夏目漱石「夢十夜・第六夜」
運慶は委細頓着なく鑿(のみ)と槌(つち)を動かしている・・・
その刀(とう)の入れ方が如何にも無遠慮であった。
「能く(よく)ああ無造作に鑿を使って、
思う様な眉(まみえ)や鼻が出来るものだな」と
自分はあんまり感心したから独り言の様に言った。
するとさっきの若い男が、
「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。
あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、
鑿や槌の力で掘り出すまでだ。・・・」
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リルケと漱石によって、「ロダンと運慶」の二つの姿が重なりました。
・・・
いや、違う見方もあるようです。
「詩人と小説家」の二人は、自らの創作の世界を、偉大なる「彫刻家と仏師」に重ねたのでは・・・。
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修学旅行が終わり、次のプロジェクトが始まる前の少しだけ静かな校長室。
本棚から引っ張り出して読んでみました。