今日の一言 9月11日 ノーブレス・オブリージュ
- 公開日
- 2023/09/11
- 更新日
- 2023/09/11
校長雑感 一隅を照らす
学校では、定期的に校内で服務・コンプライアンス研修を実施します。
研修の目的は次の通りです。
「学校の教職員が、全体の奉仕者として公正に職務を執行するため、関係法令と職務規律について学ぶことにより、常に公務員としての自覚を持って行動し、不祥事事案の根絶及び市民の信頼回復に向けて積極的に取り組む姿勢を涵養すること」
民間人校長として10年目となります。採用初年度には、様々な研修を受けました。どの研修内容も重要であり、どれ一つとっても聞き逃すことができませんでした。その中でもコンプライアンスに関しては、「公務員という全体の奉仕者」としての法令順守という観点は、私にとって新鮮であり、大きな緊張感をもって研修に臨んだことを記憶しています。
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校内研修では、喫緊で特に問題視されている事案に始まり、関係法令・職務規律など多岐にわたり説明したり、話し合ったりします。こまごまと話をするだけではなく、コンプライアンスの重要性を理解してもらうために、私は「ノブレス・オブリージュ」という考え方を伝えることがります。
【ノブレス・オブリージュ】
一般に「高い地位や身分に伴う義務(大辞林)」と言われます。公立学校の教職員が「高い地位や身分」かどうか疑問ですし、不適当であると謗られることを覚悟して、敢えて私は先生方に「皆さんに課せられている法令順守・服務規定は、ノブレス・オブリージュだと認識していただきたい。」とお話しします。
先生と呼ばれ、子どもたちや保護者の皆さんの前に立つからには、高い地位や身分があると自覚し、自らに義務を課すという、覚悟を!
ノブレス・オブリージュ! 容易ではないのは、この「自らに課す」ということです。そして、このことに「気づく」ことです。
【新渡戸稲造 武士道】
私がメンターと仰ぐ新渡戸稲造の「武士道」に次の一節があります。公立学校の教職員と武士は比較できるものではないようにも思いますが、「意気込み・覚悟」として読み解けば、あながち的外れではないと思うのですが、いかがでしょうか。
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『武士道(シヴァリー) (chivalry)はその象徴たる桜花と同じく、日本の土地に固有の花である。それは古代の徳が乾からびた標本となって保存せられているのではない。それは今なお我々の間における力と美との活ける対象である。
それを生みかつ育てた社会状態は消えうせて既に久しい。しかし今はなき遠き星がなお我々の上にその光を投げているように、封建制度の子たる武士道の光はその母たる制度の死にし後にも生き残って、今なお我々の道徳の道を照らしている。
私がおおざっぱにシヴァリー(chivalry)と訳した日本語は、その原語において騎士道(ホースマンシップ) というよりも多くの含蓄がある。
「ブシドウ」は字義的には「武士道」、すなわち武士階級がその職業、および日常生活において守るべき道を意味する。
一言にすれば「武士の掟」、すなわち武人階級の「身分に伴う義務 (ノーブレス・オブリージュ) 」である。』
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写真:新渡戸稲造