今日の一言 9月13日 一隅を照らす=雪のひとひら
- 公開日
- 2023/09/13
- 更新日
- 2023/09/13
校長雑感 一隅を照らす
日々書いている校長雑感。副題は『一隅を照らす』を掲げています。いろいろな機会に、ふとこの言葉を想起させる場面や物語に出会います。
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「雪のひとひら」(ポール・ギャリコ著)
言わずと知れた名作中の名作。ご存知の方も少なくないでしょう。ギャリコの文章は最初から最後まで清廉な美しさに溢れています。この本に出会ったのは、今を去る二十数年前。この週末に、ふと読み直したくなって手に取りました。
“雪のひとひら”は、主人公の名前です。
彼女が生を享けてから天に召されるまでのものがたりです。
彼女−雪のひとひら−は、ものがたりの中で、
私たちの同じように様々な出来事を体験します。
そして、繰り返し繰り返し自問自答します。
□なぜ私は生まれてきたのか。
□人生を彩る様々な出来事は何のためにあるのか。
□私は何者か。
□だれが私を、何のために創ったのか。
なぜ、なぜ、なぜ・・・・・・?
↓ ↓ ↓ ↓
***抜粋***
最後に、雪のひとひらは、自分が生を享けたこの世界のありようとその意味に、心から感嘆したのでした。・・・思えば大あり小あり、美あり醜あり、多あり少あり、驕れるあり慎ましさあり、世は様々でした。けれども、いまにしてわかったように、どんなにささやかな貧しい存在でも、ひとつとして無駄に見過ごされることなく、造り主そのひとの偉大な意匠の一部として一役買っていたわけですし、造り主の目には、その意味で、いかなる輝かしい強大なものにもひけをとらぬものだったのです。・・・・だれひとり、何ひとつとして無意味なものはありませんでした。
雪のひとひらは、この宇宙のすばらしい調和を思い、この身もそのなかで 一役果たすべく世に送られたことを思いました。すると、安らかな、みちたりた思いが訪れてきました。
『雪のひとひら』ポール・ギャリコ著・矢川澄子訳・新潮文庫(P.142-P.144)
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【一隅を照らす】とは、こういうことなのでしょうか?
読み終わるころには、夜も更けて、あらためて夜空を仰いでみたくなった秋の夜でした。