堺市立三国丘中学校

今日の一言 俺流 12月1日

公開日
2025/12/01
更新日
2025/12/01

校長雑感 一隅を照らす

≪12月の学校だよりから≫

『俺はオレ,価値観の物差しは自分の中にある』  

3年生は、高校受験真っ只中。将来について想い馳せながら、自分は何者なんだろう?などと悩んでいるんじゃないかなと思います。そんな時、人生を強い想いで走り通したある人のことを思い出しました。今年もこの話をさせてください。

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指揮者・小澤征爾さん(令和6年2月6日没・88歳)です。音楽界での活躍のみではなく、成功に至るまでの型破りの挑戦・生き様にも、多くの人たちが感動しました。また、著名な人々との対談などもとても興味深いものでした。その受け答えが、偉ぶらず、とても素直で誠実だったこともありますが、加えて印象的だったのは、彼の独自の価値観でした。

 20代でニューヨークフィルを指揮し、その後、時を経ずしてボストン交響楽団の音楽監督に就任しました。その時期のインタビューで彼はこんなことを言っています。

 「多くの人が、私のことを≪世界の小澤≫というけれど、世界ってなんなんでしょう?私は満州生まれだし、音楽は日本で勉強したし、音楽しているところが、今アメリカって言うだけで、“俺はオレ”だと思う。世界に認められなければだめですか?僕は世界の小澤って言い方、好きじゃない。」

 当時の彼は、日本が独自の評価基準を持つことができず、海外で認められた時のみ騒ぎ立てる風潮に疑問を持っていました。

 その想いは,年月が経っても変わることはありませんでした。2002年、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任。その時、テレビ番組「小澤征爾64歳の挑戦」で同様の発言をしています。

 Q:「日本は、今グローバル化が進み、海外で活躍することを求められている時代です。ですが小澤さんのように、世界で活躍する人が、今、日本から次々と現れるという状況にあると思いますか?」

小澤:「(質問の真意がわからない様子で)ん~わかんないな。でも大切なのは、ひとり一人がどういう風に生きていくか、ですよね。“日本から”とか、関係ないんじゃないですか。」

 番組は、グローバル化を目指す日本へのエールを、「世界」の小澤に求めたのかもしれません。

しかし、小澤の答えは違いました。国を意識した「グローバル」をあっさり否定し、ひとり一人の、とても個人的な能力や想いや生き様が「本当のグローバル」なんだ!と。

 ボストン交響楽団時代の小澤さんは、オーケストラを引き連れて帰国すると、ホテルで団員を浴衣に着替えさせて、日本風の宴会をするほど、日本大好きで日本を根っこに持っている人です。それは、ことさらに日本を強調するわけではなく、彼にとってはごく当たり前で、ただ楽しもう、喜んでもらおう、としているだけなのです。

俺はオレ!価値観の物差しは、自分の中にある・・・と