今日の一言 10月2日 文化活動発表会に向けて
- 公開日
- 2023/10/02
- 更新日
- 2023/10/02
校長雑感 一隅を照らす
マーラーの第3交響曲。
オーボエとイングリッシュホルン。
東京都交響楽団。
学生時代には、プロの演奏家に交じりエキストラとして演奏させてもらえる、このような機会があります。その初めての「バイト」の時のはなしです。
事前準備としてスコア(すべてのパートが書かれている楽譜)を見ながら、CDを聴きます。自分の演奏するパートは全合奏(tutti)のところがほとんど。木管楽器だけで演奏するところも随分と音の厚みがあります。CDを聴くだけだと、よく聞こえてこない。
少しだけ緊張が緩みました。
・ ・ ・ ・
練習3回、ゲネプロ(通し練習)、本番
当時、コンサート本番に向かってのスケジュールはこんな感じでした。
さて、練習の初日。
練習会場は上野の東京文化会館の地下。
そうそうたるメンバーが並んでいます。
指揮者(たしか井上道義さん)がにこやかに練習場に入ってきます。
軽く挨拶をすると「では始めましょう!」とあっさりと練習が始まりました。
大きな響き。
なんて充実感のある安定した音がしているんだろう。
そうこうするうちに、
いよいよプロのオーケストラで初めて音を出すときが来ました。よし!っと意気揚々と吹きはじめましたが・・・・・
「あれ、自分の音がみんなの音からはみでちゃう!」
「やばいぞ」「どうしよう」「なんで?」
私の右側にいるメンバーの「ん?」という怪訝そうな視線。曲は進んでいきます。私は吹く度に、同じような違和感を感じます。そしてメンバーの同じような反応。
冷や汗を流しながら練習は続きます。やっと休憩になりました。
「何が間違っているのでしょうか?」
「私の音だけ飛び出てきこえるんですが・・」
私には知らんぷりで談笑しているメンバーに恐る恐る話しかけました。
そう?気のせいじゃない?
(えっ、あれだけ怪訝そうな、迷惑そうな顔してたのに)
「いや、どうも気持ち悪いんです。」
どこのところ?一緒にやってみるか?
数小節一緒に演奏してくださいます。
あー、なるほど。君、音が長すぎるんだよ。こんなふうな記譜でも、短く、アタック(出だしのタンギング)は強めに吹かなきゃ。やってみ!
言われたとおりに吹いてみると、もう自分の音が聞こえてきません。みんなの中に音が溶け込みました。
教えてくれた彼は、ニコッとして、
まあ、そういうことだな!
難しく考えるなよ!
というと、また談笑をはじめました。
* * * *
「演奏の原理」というこの本は、こんなことを悩みながら勉強していたころ読んだものです。難しそうに見えますが、実は教科書に書いてある内容と変わりありません。
音楽を演奏する原理として、知っておくべきことは・・・
音は、どのように演奏されるのか?
短い・長い
強い・弱い
速い・遅い
まず、このことを明確にして演奏しなさい・・と。
* * * *
あの経験の後は、この3つのことを意識するだけで、何だか怪訝な顔をされる回数が減ったような気がしました。