堺市立三宝小学校

卒業式 〜式辞 校長より〜

公開日
2024/03/18
更新日
2024/03/18

学校

 卒業生の皆さん,卒業おめでとうございます。
 少し寒い春の日となりました。3月は弥生と呼ばれる季節。弥生の「弥の字」は「ますます」の意味,弥生の「生(せい)の字」は「命が芽吹く」という意味があります。卒業式を迎えるこの季節は,まさに,命の躍動を感じる,これからの成長を期待する季節といえるでしょう。

 さて卒業生の皆さん,今は卒業証書をもらって,ほっとひと段落といった気分でしょうか。それともこのあとの呼びかけを考えて緊張しているのでしょうか。ただ言えるのは,今,前を向いて座っている皆さんの顔は晴れやかで,少し大人びた表情であるということです。

 卒業は一つの業を終えたことを示します。何かを「やり遂げた」ということです。しかし,それはまた,新しいスタートを切るということにもつながります。卒業を機に,一旦立ち止まって,自分の成長を振り返ることは大切なことですが,これからも成長の歩みは,とめないでいてほしいと願っています。

 今から6年前,皆さんは小学校に入り,ひらがなを覚え,足し算引き算を覚え,学校生活を送ることを学び始めました。いろいろな失敗や悔しい思いもし,逆にたくさんのうれしいこともあったでしょう。この6年間の成長の濃さは一人一人が実感していることでしょう。6年前の自分を思い返し,ぜひ今の自分の成長を実感してください。誰もが「自分は成長できる存在である」ということは,疑いのないことでしょう。だからこそ,今度は,今から6年後の姿を想像してほしいのです。

 今,皆さんのほとんどは12歳。そしてあと6年後の18歳になると,現代では成人として扱われることになっています。ちなみに18歳になったら,どんなことができるか知っていますか。

 まず男女とも18歳になったら,結婚ができます。ローンを組むことができます。クレジットカードを作ることができます。医師免許や薬剤師免許などの国家資格をとることができます。自動車の免許が取れるし,選挙権もあります。うれしいですか,それとも怖いですか。社会の多くのことに,大人として参加できるということは,皆さん自身が,責任を自分で取るということになります。18歳以上を大人として扱う,という世の流れに皆さんはどう対処するのでしょうか。あと6年後の世界で自分は大人になった自覚をもてているでしょうか。

 急に私たちは大人になるわけではありません。ただ,親にばかり頼るのでなく,自分で生きていく,「自立」を大人になる条件の一つとして考えると,そのために皆さんは賢くならなければいけません。受験やテストのための勉強ではありません。一人でも生きていける,自分の人生をかけた賢さを身につけるための勉強をしなければなりません。卒業文集に将来の夢を多くの人が語ってくれていましたね。プロのサッカー選手,漫画家,シェフ,お金の稼げる仕事に就きたいという人もいましたね。では,そのための準備はいつ始めるのですか。いつ学ぶのですか。目標設定シートは書きましたか。自分の人生です。ぜひ自分でコントロールしてください。そして,自分で責任を取れる大人になろうという自覚はしておいてほしいと願っています。たった6年後です。時は流れ,待ってはくれません。まさに「君たちはどう生きるか」です。今からできること,今からしておくとよいことをぜひスタートさせてほしいと願っています。

 さて保護者の皆様。今日107名の子どもたちが卒業します。一旦,子どもたちをご家庭にお返しします。しかし,小学校で過ごした6年間の生活は,子どもたちの人生の半分を占めるものです。学習としての学びだけではなく,友だちとのかかわり方,自分をコントロールする方法など家庭では学びにくいことを,学校という集団で学んできました。現代は多様な社会です。いろいろな考えを持つ人々,多くの国籍の方や多様な文化の中で子どもたちは育っていきます。私たち大人は,今までに見たことのない新しい社会にあっても,正しい答えを示せるかどうか自信がなくても,子どもたちの先を生きるものとして,多くのことを背中で示していかなければなりません。学校も保護者もそして地域も,成長という変化,改善という姿勢をこれからも子どもたちに示していこうではありませんか。これまでのご理解とご協力に深く感謝し,お礼を申し上げ,これからも共に子どもたちを育てていくという使命を果たせるように学校は努力してまいります。どうぞ どうぞよろしくお願いいたします。

 最後に卒業生の皆さん。今日から選抜高校野球が始まります。彼らの中には,野球のために中3で親元を離れることを決め,一人で寮に入り生活を始めた人もたくさんいます。皆さんより少し年上の先輩たちの躍動する姿を自分の姿に重ねて,どれだけの覚悟をし,練習を重ねて甲子園に出てきたのだろう,どれだけの失敗や悔しさを乗り越えてきたのだろうという思いを込めてまた応援してあげてほしいと願っています。

 未来の大人である,皆さんの成長に期待しています。これからの「さかい」を,いえ,これからの「にほん」をどうぞよろしくお願いします。

     令和6年3月18日

         堺市立三宝小学校 校長 安原 巧